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左近山のバス路線史
左近山団地は、最寄り駅である二俣川駅から相鉄バスに揺られて10分少々でアクセスできる、いわゆる“バス便”の団地。左近山団地のバス停の名称は、「左近山第1」にはじまり、「左近山第6」まで、6連続で並ぶ左近山まみれのバス停たちは、引っ越してきた身にとってはなかなかのインパクトでした。朝から晩まで二俣川駅と左近山団地を行き来するバスは、左近山団地の暮らしに無くてはならない、生活を支える大切な足と言えるでしょう。
左近山団地を行き交うバス系統は、二俣川駅から左近山団地を通って、JR東戸塚駅までを結ぶ便が大多数なのですが、改めてバスの路線図を眺めると、単純に二俣川駅や東戸塚駅とを結んでいるだけでなく、複数の系統、別ルートで運行されていることに気づきます。左近山団地開発当時は、二俣川駅とを往復する系統のみで運行開始されたようだが、現在の複数の運行系統に至るまでに、どんな変遷があって、どのような系統が運行されているのかを調査しました。
目次
調査方法
情報元・情報の集め方
相鉄グループホームページで公開中の社史及び下記の資料より、左近山団地周辺の路線バス(相鉄バス)系統の歴史について調査を行なった。
・相鉄グループホームページ
・「バスルートマップ神奈川県交通地図」運輸経済研究センター(1979)
・「相鉄70年史」相模鉄道(1987.12)
・「左近山連合自治会誕生50周年記念誌」左近山連合自治会誕生50周年記念実行委員会(2019.6.29)
・「横浜市立左近山第二小学校創立十周年記念誌『わたしたちの左近山』」横浜市立左近山第二小学校(1980.11.5)
・「神奈川県のバス時刻表ライブラリー」のりあいアーカイブス(2018.8)
・住宅地図に収録されている路線バス系統図
情報の分析・編集の方法
左近山団地周辺の路線バスの運行系統の変遷・現在の運行本数について調査を行なった。
1点目に、左近山団地入居開始以降のバス系統の変化について、次第に系統が延伸・新設されて現行の系統網になったことを年表と地図で整理した。
2点目に、現在の各系統の運行本数について、各主要バス停別(二俣川駅南口・二俣川駅北口、左近山第1、左近山第6、東戸塚駅西口、鶴ヶ峰駅)に整理した。
3点目に、左近山団地が開発される以前の昭和30年代の周辺路線バス系統について、地図上で整理した。
バス路線の変遷
▲先に入居開始した街区に合わせ、まずは左近山第3まで開通
▲1年後に左近山第6(市沢団地付近)まで開通
▲保土ヶ谷バイパスを経由で、駅北口と左近山第1を短絡するルートが開通
▲左近山第6から鶴ヶ峰駅まで延伸
▲環状2号を経由して、東戸塚駅西口へ乗り入れ。左近山団地は2駅アクセスが可能に。
▲朝の駅行き便が多いため、左近山第1→二俣川駅行の便数が最多。
▲日中時間帯よりも、朝夕ラッシュ時に便数が増強されている。
【編集後記】
充実していった運行系統
運行開始当初は、二俣川駅と左近山団地を単純往復する系統のみでスタートしたが、その後の道路整備の進展により、二俣川駅と左近山第1をダイレクトに結ぶ保土ヶ谷バイパス経由の系統新設や、環状2号の開通を契機とした東戸塚駅への乗り入れを果たしていることが分かった。また、現在の運行本数は極めて限られるが、旭区役所に近い鶴ヶ峰駅までの系統も新設されている。
今般の調査においては、過去の運行本数の変遷を知ることはできなかったが、左近山団地の人口が減少傾向であるので、おそらくは左近山団地の人口増減と比例して、バスの運行本数はピーク時よりも少なくなっていることが想像されるが、それでも、1日片道100便規模の運行本数を維持し、東戸塚駅からのアクセスも加わったことを鑑みると、左近山団地にとってのバスの利便性は、十分に健闘していて、“バス便圏”としては実に恵まれている環境ではないだろうか。
バスの利便性は、団地の現状を示すバロメーター
最寄り駅から少し離れた“バス便”圏に立地する左近山団地にとって、バスは生活に無くてはならない、インフラと同じ存在。左近山団地に住む人や訪れる人が増えれば、バスの利用客が増えたり、本数が増えるかもしれないし、はたまた、バスの利便性が高まれば、左近山団地に住む人が増えるかもしれない。左近山団地の人口減少に加え、コロナ禍による外出需要の激減で、バス事業者を取り巻く環境は厳しい情勢であろうが、団地とバスは、お互いに補完しあう関係性で、バスの需要の大きさや利便性は、団地の現状を示すバロメーターともいえる。直近では、二俣川駅〜左近山団地を結ぶ系統で、全国的に見てもまだ事例の少ない自動運転バス試験走行のテストも行われており、次世代のモビリティの実証実験の場にもなっているのが左近山団地。バスに乗る人に限らず、日常的にバスに乗らない人にとっても、地域の大切な足について考えるきっかけになれば嬉しいです。